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アジアのピッチから~JFA公認海外派遣指導者通信~第35回 中村敦 ブータンアカデミー監督

2018年10月19日

アジアのピッチから~JFA公認海外派遣指導者通信~第35回 中村敦 ブータンアカデミー監督

アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。第35回は、ブータンサッカー連盟(BFF)アカデミー監督を務めている中村敦氏のレポートです。

海外赴任のきっかけ

2016年に初めて海外(タイ)のクラブで監督を務めたのですが、給料未払い等があり、途中で解雇という形で終わりました。折角海外に出たので更に挑戦を続けたいと思い、JFAからの募集に応募しました。

ブータンの印象

今年の3月からブータンに赴任しています。高度が2500m前後の首都ティンプーが主な活動場所となりますが、山国なので海が恋しいです。空気も乾燥して涼しく、日本や他の東南アジアの国々とはかなり印象が違います。街中では、民族衣装のゴ(男性用)とキラ(女性用)を着た人々が普通に生活しており、一年中お祭りのような印象でした。驚いたことは野良犬の多さです。特に夜は活動が活発であちこちで縄張り争いをしています。一方、基本的に治安は良く人々はみんな親切です。

日々の活動内容

アカデミーの選手達は夕方までは学校、その後アカデミーに帰り、宿舎脇にある人工芝ピッチで2時間程トレーニングを行います。夕食後は学習の時間です。教育熱心なお国柄であるブータンでは、学校の成績で将来の仕事がほぼ決まってしまうため、スポーツよりは学業が優先となります。年間の活動は2月からスタートしますが、6月はテスト勉強期間、7月は全選手が一旦帰郷するため、7月半ばから活動を再開します。11月は再びテスト期間、12月と1月は外気がマイナス気温になり、暖房や温水の施設も十分でないため活動不可、よって、実質一年間で7か月半しか活動できません。日本の子ども達と比較すると、ボールを蹴る回数が必然的に少なくなり、これが年齢が上がるにつれて大きなハンデとなっています。

現在ブータン国内において、U-18世代ではBFFアカデミーの他にクラブは存在しません。U-15はBFFアカデミー以外にもチームは有りますが、同年代の他チームとは力の差があり過ぎるため試合相手に困っています。つまり、育成年代において継続的に活動しているのは実質我らのアカデミーチームのみというのが現状です。このU-15チームはティンプー市のU-15リーグで優勝。U-18チームはティンプー市リーグに参加していますが、去年の海外活動日数過多で出席日数や学業成績が問題になり、今年は昨年の1部でなく2部リーグに参加し優勝しました。しかしながら、両リーグ共、活動期間が実質2ヵ月弱という短期間であり、試合数も非常に少ないです。首都で試合が出来る会場がチャンリミタン競技場一か所のみとなっており、そこを、全てのカテゴリー(草サッカーを含む)で使用しているため、年間を通してリーグ戦を行う環境が整っていないのが理由です。

日本キャンプ

以上の状況から、海外に出て強い相手と試合をする事はチーム強化の必須条件と考え、9/15~25の期間、JFAの協力の元、日本でキャンプを実現させる事ができました。結果は9戦全敗でしたが、ブータン国内では経験する事の無い、同年代の選手達と真剣に戦う事が出来ました。対戦相手にも恵まれ、非常に得る物が大きいキャンプだったと思います。特に、「井の中の蛙」だった状況から「大海」を知る事が出来た選手達には、意識レベルに大きな変化がある事を期待しています。また、ブータン国内には無いビーチ、水族館、電車に乗る等、ピッチ外でも様々な経験をし、人間的にも大きくなってくれればと思います。最後にJFA、Jヴィレッジ、星槎学園、並びに対戦してくださった各チームの皆様に厚く御礼申し上げます。

今後の目標

10月下旬からU-15のSAFF(南アジア連盟)選手権が開かれます。今回の日本キャンプに参加した15歳以下の5人が出場できるので、得た成果を上手くチームに還元したいと思っています。また、来年にはU-18世代のSAFF選手権とアジアカップ予選がありますので、さらなるレベルアップを図り、良い結果を残したいです。それが、将来のブータンサッカー界の意識変化に繋がればと思っています。

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