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【JFAこころのプロジェクト「夢の教室」15周年企画】山田隆裕さん(サッカー)×藤井瑞希さん(バドミントン)夢先生対談
2022年07月21日
JFAこころのプロジェクトは2007年4月19日に第1回の「夢の教室」の授業が行われ、今年で15周年を迎えました。ここでは夢先生を務める山田隆裕さん(サッカー)と藤井瑞希さん(バドミントン)による対談を実施し、プロジェクトとの関わりや児童・生徒たちとのエピソードなどを聞きました。
○取材日:2022年6月23日
――JFAこころのプロジェクトに携わるきっかけは、どのようなものでしたか。
山田 立ち上げに関わっていた後輩の安永聡太郎さんを通じてお会いしたJFA(日本サッカー協会)の方々に「とにかく夢を語ってほしい」と言われて、何が始まるのか分からないまま携わりました。失礼ながら、いつまで続くのかも分からないような手探りの状態でしたから、15年も続いたこと自体が驚きですし、段階を踏みながら大きくなっていく様子を目の当たりにできて面白かったですね。
藤井 私が関わったのは2012年のロンドンオリンピック後、競技者一辺倒の生活から普及活動などできることを広げていきたいという時期でした。アスリートの友人から話を聞き、「子どもたちに何か良い影響を与えられたら」と始めました。
――最初の授業は覚えていますか。
藤井 私の故郷の熊本で最初の授業をしました。初めて先生という立場になり、自覚と責任を持って伝えようと、すごく緊張しました。いまだに授業の前には緊張しますが、当時は今以上に「伝えたい」という思いが強くて、言葉を多く詰め込んだ記憶があります。
山田 立ち上げ当時は日本サッカー協会の近隣で行っていたので、最初の授業は都内でした。引退後、事業をしたので若い企業家向けなど講演活動の機会が多くあり、緊張はしませんでした。
――子どもを相手に、特に心掛けることはありますか。
山田 「夢の教室」の授業の対象は小学校5年生と中学2年生なのですが、このわずかな年齢差が大きいものなんです。5年生には難しくても、中学生なら理解できる言葉があります。それに「伝えるもの」と「伝わるもの」は、別なんです。「伝えるもの」は、僕がやってきたことを語ればいい。「伝わるもの」は熱意や、これからの人生で頑張ってほしいことを語るので、熱がこもります。
藤井 私も伝えたいことは繰り返しますし、聞いている人を巻き込むようにしています。実際には大人数を相手に話しているのですが、子どもたちには1対1で話している、と感じてほしいんです。会話しているという感覚を持って話をしていきます。
――児童・生徒が書く夢シートなどから、手応えを感じることはありますか。
山田 授業の最初に見せる僕の現役時代の映像で、華やかな場面だけを見ると、何の努力も苦労もなくプロになったと思われます。でも、君たちが思っているよりはるかに苦労してきたという話をすると、「私は非常に恵まれた環境で生活していると分かりました」といった反応があって、響いたのかな、と感じます。
藤井 バドミントンをやめたいと思ったとか、二十歳になってようやく夢を持ったと伝えると、「オリンピック選手でもそうだったのか」と感じてくれる子どもが多いです。「自分をネガティブにとらえていたけどオリンピック選手と一緒だと思って安心しました」と書いてくれる子もいます。私の話が変化のきっかけになったと思うととてもうれしいです。
山田 実は、授業の感想ではなく、自身の学生生活に深刻に悩んでいると打ち明けてきた中学生がいました。夢シートを返す時に10回分くらいの返信用の切手をつけて、「何かあったら、とにかく連絡をください」と書いて、その子としばらく文通しました。高校生になるまでには立ち直ってくれました。
――プロジェクトやご自身の変化を感じることはありますか。
山田 発足当初は元Jリーグの選手ばかりでしたが、オリンピアンや他競技の選手が夢先生を務めてくれるようになりました。子どもたちにとっても、いろいろと聞ける話の幅が広がったし、これはすごいことだと思います。
藤井 バドミントンの指導で全国を回ると、「先生の授業を受けました」という子と出会うことがあるんです。これはうれしいし、心が温かくなる感動の瞬間ですね。私自身、夢先生を始めた頃はオリンピックでの達成感でのんびりしていたのですが、子どもに向き合うことは新しい目標を見つけるモチベーションになりました。
山田 プロジェクトが立ち上がった頃に授業を受けた子は、もう成人になっているんですよね。フィギュアスケートの樋口新葉さんのように、僕らの授業を受けたことがある子、あるいは授業が転機になった子が、さまざまな世界で出てくるのかなと楽しみにしています。
――今後、このプロジェクトでどのようなことをしていきたいですか。
山田 これまでとこれからの15年間、やることは変わらないと思います。僕らは嘘なく子どもたちに話を伝えて、子どもたちの成長にいきる手伝いをするだけです。
藤井 山田さんがおっしゃるように、やることを変えてはいけないと思います。回数を重ねると、もしかしたら熱量が落ちそうになるかもしれませんが、子どもにとっても私にとっても、最初で最後の出会いかもしれないんです。貴重な瞬間であることと責任を感じて、子どもたちが何かを受け取れるよう、嘘なく向き合っていきたいです。
――夢先生に挑戦してみたいという人にアドバイスはありますか。
山田 何事にも初めてはあります。自分の中で前例をつくればいいだけですから、まずは経験してみることです。環境も整っていますから、安心してトライしてください。
藤井 選手を引退した後でも子どもの憧れになれるなんて、そうそうないことだと思います。それに、自分がしてきたことを見つめ直して、肯定できる場所でもあります。子どもたちに「きっかけ」を与えられる貴重な経験をしてほしいと思います。
――お二人にとっての「夢先生」を一言で教えてください。
藤井 責任です。
山田 僕にとっても夢、ですね。
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