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【規律委員会】 2023年9月1日付 公表
2023年09月01日
天皇杯 JFA 第103回全日本サッカー選手権大会(以下、「本大会」という。)における行為について、公益財団法人日本サッカー協会(以下、「当協会」という。)司法機関組織運営規則及び懲罰規程に基づき、当協会規律委員会(以下、「当委員会」という。)において審議した結果、下記のとおり懲罰を決定した。
1.対象者
FC東京
2.懲罰
(1)罰金500万円
(2)譴責(始末書の提出)
3.根拠条項
懲罰規程 3-7 チーム又は選手等によるその他の違反行為
天皇杯試合運営要項 第30条(参加チームの責任)
4.理由等
(1)大会マッチコミッショナーからの報告
本件は、本大会のマッチコミッショナーから報告のあった事案である。同報告及びその追加的資料に基づく対象者の嫌疑は以下のとおりである。
(嫌疑内容)
対象者は、2023年7月12日(水)に味の素スタジアムにて行われた本大会第3回戦対東京ヴェルディ戦のキックオフ時刻(19時00分)の直前に、同スタジアム内(対象者のサポーター側のゴール裏、下層スタンド前列中央付近)において、対象者のサポーター複数名(以下、「当該サポーターら」という。)が1分20秒程度にわたり花火及び発煙筒を使用するという事態を生じさせるとともに、被害の発生及び拡大を防ぎ、観客や選手等の試合に関わる人の安全を確保するために適切な措置を講じなかった。
(2)当委員会の判断
当委員会は、上記の報告の内容を精査の上、慎重に検討し審議を重ねた結果、以下のとおり判断する。
ア 管轄権について
まず、対象者は本協会に加盟する加盟チームであることから、懲罰規程第2条に基づき当委員会は対象者に懲罰を科す権限を有する。また、本大会は当協会が主催する公式競技会であることに加え、本大会の開催規程第4条に「本大会における懲罰問題に関して、本協会規律委員会が直接管轄する」と規定されていることから、懲罰規程第16条第1項第2号に基づき、当委員会は、本大会における対象者の行為に関して懲罰を科す権限を有する。
イ 事実関係
次に、事実関係について検討する。当該サポーターらの行為(上記スタジアム内で1分20秒程度にわたり花火及び発煙筒を使用した行為)については、マッチコミッショナーの報告及び映像等の客観的証拠からも明らかであり、対象者もこの点について争っておらず、事実であると認定できる。また、当該サポーターらの上記行為によって観客1名が火傷を負ったことが認められる。
ウ 対象者の有責性
続いて、当該サポーターらによる上記の行為を防止できなかったことなどに対する対象者の有責性について検討する。天皇杯試合運営要項第30条第1項に、「参加チームは、自チームのサポーターに対して、試合の前後及び試合中において秩序ある適切な態度を保持するよう努める義務を負う。」と規定されていることから、対象者を含む本大会の参加チームは、自チームのサポーターの行為についての管理監督責任、さらには、自チームのサポーターに対して、観客や選手等の試合に関わる人の安全を確保するために、適切な観戦マナーを守らせ、施設の適切な使用等を周知し、遵守させる責任(サポーターへの指導責任)を負う。また、同条第2項には、「参加チームは、前項の義務の遂行を妨げる観客等に対して、主管協会と協議の上、その入場を制限し、または即刻退去させる等、適切な措置を講じなければならない。」と規定されていることから、仮に自チームのサポーターによる危険な行為等が生じた場合には、参加チームは、速やかに、被害の発生及び拡大を防ぎ、観客や選手等の試合に関わる人の安全を確保するために適切な措置を講じなければならない。本件においては、当該サポーターらは、大量の花火を上記スタジアムに持ち込んだ上で、安全措置を講じないまま、観客席の中でも特に観客が密集したエリアにおいて、大型の応援フラッグに事前に切り込みを入れた上で、当該フラッグの下から切り込みの間より約1分20秒にもわたり100発を超えてこれを打ち上げている(当該サポーターらは、実行者の特定を困難にさせる目的で応援フラッグの下に隠れながら切り込みの間から花火を発射させたものである。)。さらに、当該サポーターらは、その周辺において、花火の打ち上げと同時に事前に持ち込んだ複数の発煙筒に引火させていることも確認されている。当該サポーターらによる上記の行為は、観客が密集するエリアにおいて行われたものであり、誤って大量の花火や発煙筒に引火したり、応援フラッグに引火していたならば、観客だけでなくピッチ上の選手や審判その他関係者にもケガを負わせるなど大惨事につながりかねなかった極めて危険な行為であるといえる。そうすると、対象者が、当該サポーターらによる上記スタジアムへの花火や発煙筒の持ち込みを許し、上記の行為の発生を防げなかったことは、自チームのサポーターに対して、観客や選手等の試合に関わる人の安全を確保するために、適切な観戦マナーを守らせ、施設の適切な使用等を周知し、遵守させるとした天皇杯試合運営要項第30条第1項(サポーターの行為についての管理監督責任及びサポーターへの指導責任)違反に当たると認められる。さらに、映像等の証拠を確認する限り、当該サポーターらによる上記の行為の発生後も、対象者において、当該行為を止めさせるための具体的な措置が取られた形跡は認められず、結果的に、対象者は、当該サポーターらに当該行為をおよそ1分20秒にもわたり継続させ、観客1名に火傷を負わせるに至っている。したがって、対象者は、被害の発生及び拡大を防ぎ、観客や選手等の試合に関わる人の安全を確保するために適切な措置を講ずるべきであるとする同条第2項に違反すると認められる。
エ 情状
対象者は、当該行為が発生したことについては、「12年ぶりの東京ダービーであり一部のサポーターの熱が高まっていることは事前に察知しており、主管の東京都サッカー協会との間との協議の上、警備員を増強することなどの対応を講じていたが、火器等の使用までは予見できなかった」とし、また、当該行為発生後の対応に関しては、「警備計画上、重点が両サポーター間のトラブル防止に向けられていたこと、当該場所は自由席で非常に込み合っていたこともあり、当該行為の実行中に警備員がたどり着くことができなかった」等と弁明している。上記弁明のうち、「火器の使用までは予見できなかった」、との点については、上述のとおり、参加チームは、サポーターに対して、適切な施設の利用を含む観戦マナーを守らせる義務を負うものであり、また、本件は、最低でも4名のサポーターが関わり計画的かつ組織的に行われていることを踏まえると、対象者によるサポーターへの事前の適切な指導、周知が行われていれば、事前にこのような危険な行為を察知し、これを防止することも十分に期待することができたといわざるを得ない。したがって、結果的に生じた具体的行為の発生を予見できなかったとしても、対象者の義務違反の度合いを軽減する事情とはなり得ない。また、花火の打ち上げが1分20秒にもわたり放置され、試合中に当該サポーターらに対して何らの措置も採られていないことからすれば、仮に「当該行為の実行中に警備員がたどり着くことができなかった」としても、対象者は、速やかに、被害の発生及び拡大を防ぎ、観客や選手等の試合に関わる人の安全を確保するために適切な措置を講じたとは認められず、対象者の責任を軽減する事情とはならない。
オ 懲罰
当該サポーターらによる上記スタジアム内での大量の花火及び発煙筒の持込み並びにこれらの使用は、天皇杯の試合だけではくJリーグの主催試合の全てを含めても、我が国のサッカー史上でも類を見ない極めて危険な重大な行為であるといえ、このような行為を防げなかった対象者の責任は極めて重いといわざるを得ない。当委員会では、対象者によるこのような義務違反の重大性に鑑み、天皇杯及びJリーグ主催試合における過去の事例に対する処分例等を参考とし、対象者に対し、譴責(始末書の提出)及び罰金500万円を科すのが相当であると判断した。
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