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ブルーノ・ガルシアのフットサル道場 vol.15「最も大切なのは「主役」が楽しんでいるか」
2020年02月26日
必見「フットサル道場」!
機関誌『JFAnews』で連載中のブルーノ・ガルシアフットサル日本代表監督のコラムをJFA.jpでもお届けします。フットサルの魅力や指導法など、フットサルだけでなく、サッカーにも通じるポイント満載です。
※本コラムはJFAnews2019年8月に掲載されたものです
異なる考え方や文化全てを享受することが大事
職業柄、講演会のスピーチの依頼を受けることが多い。日本でもスペインでも、講演では「育成の現場で特に意識すべきことは何か」という質問をよく投げかけられる。
そんなときは決まって、「マルチスポーツ視点を持つこと」と答える。「何?」という声が聞こえてきそうだが、簡単に言うと多様性を持とう、受け入れよう、ということだ。
例えば自分の場合、かつて打ち込んでいた柔道からは自分自身と向き合うことの大切さを学んだ。その一方で、フットサルではチームとして機能する(させる)には何をすべきか、徹底して考えてきた。
それを踏まえた上で言えるのは、こうした二つの全く異なるスポーツに打ち込んできたプロセスが自分のベースとなっているということだ。
私には5歳になる息子がおり、1週間のうち2日はフットサル、1日はスイミング、1日は柔道を習っている。この三つのうち、最終的に何を選ぶかは本人次第だが、複数の競技を楽しんでいる間は各々の文化に身をゆだねればいいと思っている。それぞれのスポーツに異なる特徴があるように、フットサルにはチームスポーツ特有の考え方が、スイミングには個人スポーツ特有の世界がある。それを肌で感じるだけで人としての幅が広がるから、その全てを享受することが大事だと思うのだ。
人は誰もが得意なものを持っている
では、多様性を受け入れるために指導者ができることは何だろうか。ここで一つ、実際にあった話を紹介しよう。
バスケットボール好きのある父親が子どもを地元の少年チームの練習に連れて行った。子どもにとっては初めて体験するバスケットボール。当然、うまくいかない。全くボールに触れないし、シュートしてもリングにかすりもしない。
その様子を見ていた父親はいてもたってもいられなくなり、「うちの子どもに合いそうなスポーツはあるか」とコーチに相談した。もうバスケはあきらめさせるといった体だ。しかしコーチは「まずは本人の感想を聞いてみては」と促した。一度聞いてみるかと父親が思いかけたとき、子どもが駆け寄ってきて「次の練習はいつ?またバスケがやりたい」と弾んだ声で言った。子どもはバスケを楽しんでいたのだ。
指導者や保護者は、スポーツの真の主役はそれに取り組む選手だということを認識しなければならない。そして最も大事なのは、その主役が「楽しんでいるか」に尽きる。
人は誰もが得意なものを持っているものだが、子どもの場合、経験値も低く、思慮分別もまだしっかりしていないため、自分の能力や得意分野を見極めることが難しい。
だから、指導者や保護者にはそれを助けてあげる責任がある。その一つが、誰にでもあるはずの才能や、得意なもの、好きなものをいろいろな角度から探し出してあげること。それは、指導者が多様性を持つことの大切さを理解して初めて実現できることでもある。
「スポーツや音楽を通して世の中にはいろいろな文化があると知ることが、大人になったときに役立つ」とブルーノ監督は語る
(写真はJFAアカデミー生の相撲部屋研修の一コマ)
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