JFA.jp

JFA.jp

EN
ホーム > 審判 > 最新ニュース一覧 > 【審判員インタビュー】テクノロジーが導入されても、最終判断は審判員が行う 相樂亨氏

ニュース

【審判員インタビュー】テクノロジーが導入されても、最終判断は審判員が行う 相樂亨氏

2022年11月18日

【審判員インタビュー】テクノロジーが導入されても、最終判断は審判員が行う 相樂亨氏

2010FIFAワールドカップ南アフリカと2014FIFAワールドカップブラジルに副審として参加し、2014年ブラジル大会では西村雄一主審、名木利幸副審と共に開幕戦を担当した元国際審判員の相樂亨氏に、審判員から見たFIFAワールドカップやFIFAワールドカップカタール2022の注目ポイントなどを聞きました。

※このインタビューは2022年8月13日にオンラインで実施しました。

――審判員にとってFIFAワールドカップとはどのような舞台ですか。

相樂 ワールドカップは、世界で最も大きく歴史のある大会なので、参加すること自体が光栄であり、楽しむというより責任の大きさを感じます。初めて参加した2010年の南アフリカ大会のときは緊張もせず、無我夢中で、怖いもの知らずに近い感覚で旗を振りました。帰国後の反響の大きさからもワールドカップのすごさを感じました。2014年のブラジル大会は、前回よりももう少し落ち着いて臨めました。ブラジルとクロアチアの開幕戦を担当したのですが、8万人の観客が大声でブラジル国歌を歌い、選手たちが国歌を聞いて泣いている姿を見て、あらためてワールドカップのすごみや責任の重大さを感じました。

――審判員の目線で今回のカタール大会の注目ポイントを教えてください。

相樂 ここ数大会はテクノロジーの進化と共に歩んできました。南アフリカ大会のイングランド対ドイツやアルゼンチン対メキシコで誤審が発生した後、ブラジル大会ではゴールラインテクノロジーが、2018年のロシア大会ではVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入されました。カタール大会ではAI(人工知能)がオフサイドを認知する「セミ・オートメーテッド・オフサイド・テクノロジー(SAOT)」が導入されます。こうしたテクノロジーの進化とフットボールの関係性が、私にとっては一番気になるところです。

――副審にとってSAOTはどのような存在になりますか。

相樂 私自身、ブラジル大会の開幕戦でオフサイドの判定を一つ間違えていた気がするんです。Jリーグでめったに間違うことはないのですが、世界トップレベルの試合になるとそれが起こり得る。もちろんどの審判員も間違いを犯さないように尽力していますが、今はVARやSAOTがフォローしてくれるという安心感はあると思います。ただ、それでもテクノロジーによって判定が覆ることがないようにしなければならないという気持ちは持ち続けていると思いますし、SAOTが入ることでどのような対応をしなければならないのかという点に注目したいですね。

――誰がどの試合を担当するのかという点も注目されます。

相樂 私自身、誰がどの試合に割り当てられるかを予想するのが大好きなんですよ(笑)。例えば、ブラジル大会の開幕戦のように欧州と南米のチームが対戦するときは、両大陸の審判員は起用されにくい。以前はメキシコの主審が割り当てられることが多かったのですが、ラフシャン・イルマトフさん(ウズベキスタン)や西村雄一さんの活躍によってアジアの主審も難しい試合に割り当てられるようになりました。南アフリカ大会の開幕戦はイルマトフさんが担当したので、ブラジル大会の開幕戦は西村さんが割り当てられるだろうと予想し、実際にその通りになりました。予想していたので、割り当てられたときには私も西村さんもほとんど驚きませんでした。
今大会には女性審判員が初めて参加します。誰がどの試合に割り当てられるのか、山下良美さんは起用されるのか、非常に興味深いです。ちなみに、FIFA(国際サッカー連盟)の男子大会に初めて女性審判員が参加したのはFIFA U-17ワールドカップインド2017ですが、女性主審が最初に担当したのがU-17日本代表の試合でした。日本はフェアプレーを順守し、審判員に対する異議や不満も言わないという認識がFIFA内に強くあり、日本の試合なら割り当てられると判断したのだと思います。だから今回も、ドイツ対日本の試合は女性主審が担当するのではないかと私は予想しています。

――ワールドカップでのレフェリングが日本国内の試合に影響を及ぼしている部分はありますか。

相樂 大会前に審判員が集められて行うトレーニングは、その時々の戦術のトレンドを反映した内容になっています。南アフリカ大会のときはスペインのポゼッションに対して、どこにポジションを取るべきかということをひたすら練習したので、帰国後のJリーグでは、当時のガンバ大阪など狭い局面をパスで崩すチームのサッカーにもうまく対応することができました。ブラジル大会、ロシア大会のときはカウンターアタック対応ですね。ロシア大会での日本対ベルギーの最後の失点シーンをぜひ見ていただきたいのですが、あのときの主審はいち早くベルギーのカウンターに対応していました。あの主審だけができたわけではなく、大会に向けてトレーニングを重ねた審判員は全員が同じように動けていたはずです。審判員はあのカウンターを予測できていた、ということを忘れてはいけないと思います。

――ファン・サポーターやサッカーファミリーには審判員のどのような姿を見てほしいですか。

相樂 テクノロジーが導入されたとしても、最終判断は審判員が行います。全てをテクノロジーに任せればいいというわけではなく、人がきちんと判断するところに審判員としての醍醐味(だいごみ)があると思っています。国の威信を懸けた戦いの舞台に「最終的な判定は任せた」と託されてピッチに立っている審判員のすごさを感じていただきたいですし、そこにやりがいや魅力がありますので、それを感じながら見ていただけるとうれしいですね。

FIFAワールドカップカタール2022

大会期間:2022年11月20日(日)~2022年12月18日(日)
グループステージ
第1戦 11月23日(水) 16:00[現地時間] vs ドイツ代表
第2戦 11月27日(日) 13:00[現地時間] vs コスタリカ代表
第3戦 12月1日(木) 22:00[現地時間]  vs スペイン代表

大会情報はこちら

OFFICIAL PARTNER
KIRIN
OFFICIAL SUPPLIER
adidas
SUPPORTING COMPANIES
  • 朝日新聞
  • SAISON CARD
  • 大東建託
  • Family Mart
  • JAPAN AIRLINES
  • au
  • Mizuho
  • MS&AD
  • Toyo Tire Corporation
アーカイブ
JFAの理念

サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、
人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献する。

JFAの理念・ビジョン・バリュー