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[特別企画]リスペクトシンポジウムを開催 ~われわれが守るべきスポーツの価値と未来~ 前編

2021年09月09日

[特別企画]リスペクトシンポジウムを開催 ~われわれが守るべきスポーツの価値と未来~ 前編

日本サッカー協会(JFA)は9月10日(金)から19日(日)まで「JFA リスペクト フェアプレーデイズ2021」を設置しています。今年も、地域・都道府県サッカー協会、Jリーグや各種連盟と協力し、各種試合における「リスペクト・フェアプレー宣言」やバナーの掲出等を行い、11日(土)にリスペクトシンポジウムをオンラインで開催します。
リスペクト、フェアプレーについて考えるこの期間を前に、昨年行われたリスペクトシンポジウムを振り返ります。

※本記事はJFAnews2020年10月に掲載されたものです

大切に思い合うことと、子どもたちの権利

日本サッカー協会(JFA)は毎年、Jリーグや各種連盟などと協力して「JFAリスペクトフェアプレーデイズ」を実施している。今年は、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスによる、スポーツ界や社会への影響に焦点を当てた内容となった。
初日の9月5日に開催されたシンポジウムは「サッカーのある生活が戻ってきた~大切なサッカーを自分たちの手で守っていくために~」をテーマに、基調講演やパネルディスカッションが行われた。
最初に田嶋幸三JFA会長による基調講演がVTRで流された。田嶋会長は今年3月に新型コロナウイルスに感染し、未知のウイルスへの恐怖とともに、罹患者や医療従事者らに対する中傷、 差別などを痛感した。また、新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)が発生した高校サッカー部や大学ラグビー部に対するSNSなどでの誹謗中傷や個人情報の流出などが世間を騒がせた。
こうした状況に田嶋会長は「こうしたことがまかり通っていると、感染したことを隠蔽(いんぺい)したり、検査を受けることを躊躇(ちゅうちょ)するなど感染拡大につながりかねない」と警鐘を鳴らす。「ルールを守り、フェアプレーの精神とリスペクトの考えを胸に刻む。このベースがあれば、素晴らしい社会になっていく。こういう苦しい時だからこそ広めていきたい」と力説した。
日本ユニセフ協会の髙橋愛子さん(広報・アドボカシー推進室マネージャー)は、スポーツにおける子どもの権利について講演した。スポーツは、子どもの心身の成長を促し、他者との協力、ルールの尊重といった精神の浸透に役立つとして、ユニセフは世界中の活動現場で取り入れている。スポーツをすること自体が子どもの権利であり、ユニセフとしてはスポーツの現場における子どもの権利も重視している。
ユニセフの「子どもの権利条約」には国際サッカー連盟(FIFA)も賛同しており、子どもたちの権利をサッカーを通して推進すべく、「FIFA Guardians(子ども安全保護プログラム)」を定めた。FIFAはその中で、子どもたちの最善の利益を考えることなどを求めている。また、JFAもユニセフが発行する「子どもの権利とスポーツの原則(Children's Right in Sport Principle)」に賛同し、それに則った活動を推進する一方、19年には「JFAサッカーファミリー安全保護宣言」を策定した。宣言には、暴力・暴言、ハラスメントの根絶や医科学的見地に立った選手のサポートや活動の在り方などが記されている。
髙橋さんは行き過ぎた指導や勝利至上主義について疑問を呈する一方で「リスペクト、大切に思うこと。子どもと指導者が互いを大切に思うことができれば、誹謗中傷・差別もなくなり、自ずと暴力もなくなると思う。そういう考えがサッカー界から、スポーツ界や社会全体にも広がっていけば」と、スポーツが持つ力に期待した。

コロナ禍で見えた実情 誹謗中傷が起こす悲劇

今回のシンポジウムでは、他競技も含めてさまざまな立場の人々によるパネルディスカッションも行われた。
日本バスケットボール協会(JBA)からは、宇田川貴生さん(審判委員長/インテグリティ委員長)が参加。バスケットボールも活動を再開したが、コロナ禍の環境下であらためて浮き彫りになったことがあるという。それは、リモートマッチなど観客数を減らした試合で聞こえてくる指導者の暴言だ。
暴言に対して審判員がテクニカルファウルを取ることが制定されたが、ある中学生チームの試合で、1試合に2度のテクニカルファウルを受けて退場処分になる指導者が出た。宇田川さんは「せっかく活動を再開して楽しもうとしているのに指導者による暴言がいまだにある。そうしたことへの対処も含めて活動再開に取り組んでいきたい」と話した。
また、サッカー界でも新型コロナウイルスに感染した人への非難や迫害は見受けられる。島根県では、感染者が出た高校サッカー部が中国地域の大会出場を取りやめた。ルール上は辞退する必要などなく、関係者も引き留めたのだが、指導者も選手も中傷による大きな精神的ダメージを受け、辞退せざるを得なくなってしまったのだ。
バスケットボール界でも、濃厚接触者となった人が所属するチームを試合に出場させるか否か議論になったケースがある。さらに男女国内トップリーグであるBリーグとWリーグでは、審判員7人が今シーズンの参加を辞退した。感染の不安と恐怖、試合に出場することに対する職場や家族の意向、感染した場合の誹謗中傷の恐怖といった心理的影響が背景にある。JBAは審判員の心情を慮って辞退の申し出を受理するとともに、今シーズンの実績がなくとも来シーズンもステータスを下げることなく参加できることを認めている。JFAでもガイドラインを定めている。コロナ禍でさまざまな大会が中止となる中、育成年代では選手たちが1試合でも多く試合ができるよう、リーグや連盟の垣根を越えてサッカー界が一体となって大会の整備に動いた。選手の数がそろわないなどの理由で大会に参加できないチームを不戦敗とせず、抽選制を設けるなどの措置も講じられている。この説明に宇田川さんは、「フェアであることを理由に抽選という方式を選ぶという発想がすごい。同時に、大会参加を辞退した島根のチームの話は衝撃的。そういうことが日本の実情を表しているようで非常に悲しい」と話した。

後編はこちら

日本バスケットボール協会の宇田川貴生さん

2020年度リスペクトシンポジウム 概要

日時:2020年9月5日(土) オンラインで実施
参加者:地域・都道府県サッカー協会/各種連盟関係者/指導者/一般の参加者
内容:
●基調講演
 田嶋幸三(公財)日本サッカー協会 会長
 髙橋愛子(公財)日本ユニセフ協会 広報・アドボカシー推進室マネージャー
●パネルディスカッション
・テーマ:
 サッカーのある生活が戻ってきた~大切なサッカーを自分たちの手で守っていくために~
・モデレーター:
 山岸佐知子(公財)日本サッカー協会 理事、リスペクト・フェアプレー委員長
・パネリスト:
 宇田川貴生(公財)日本バスケットボール協会 審判グループゼネラルマネージャー、審判委員長/インテグリティ委員長
 髙橋愛子(公財)日本ユニセフ協会 広報・アドボカシー推進室マネージャー
 佐伯夕利子(公社)日本プロサッカーリーグ 理事
 池内豊(公財)日本サッカー協会 ユース育成ダイレクター

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