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チェンジメーカー 第10回 北岡長生(きたおか・おさお) 一般社団法人熊本県サッカー協会専務理事

2012年07月20日

チェンジメーカー 第10回 北岡長生(きたおか・おさお) 一般社団法人熊本県サッカー協会専務理事

Profile

北岡 長生 / KITAOKA Osao さん
一般社団法人熊本県サッカー協会専務理事
2004年度SMC本講座修了(1期生)

1950年12月、熊本県生まれ。
熊本第一工業高校(現・開新高校)より九州産業大。卒業後、日本電信電話公社(現・NTT西日本)に就職し、日本電信電話公社熊本サッカー部(当時熊本県リーグ1部)に所属。選手は20代半ばで引退し、コーチ、監督として同チームを全国社会人選手権大会優勝、JFL昇格へと導く。県協会では、社会人委員長、技術委員長、事業委員長など洋食を歴任し、2004年より専従で現職。
2004年、自治体協力のもと(株)アスリートクラブ熊本(現・ロアッソ熊本)を設立する。熊本県体育協会常務理事。

その1 自分だけではなにもできないからね

坂口:では、よろしくお願いします。北岡さんはSMCを受けてお仕事を変えた人、第1号でした。私にとっても印象深い出来事でした。1期のSMCを受講されたあと、それまでの、大きくて安定したNTTのサラリーマンという立場を捨てて、県協会専従のお仕事に飛び込まれました。

北岡:県協会の理事長になったいきさつは、それまでの理事長が99年の国体終了を契機に辞めたんですよ。誰も理事長のなり手がいなくて、私は当時協会でいろんな事業をしおったもんだから、他の人が推してくれたのもあるけど、じゃあ、私がやりますってことで、理事長を引き受けました。まだ、会社におってなったわけですよ。

最初の一年間は、会社勤めしながら。協会宛ての電話が会社にしょっちゅうかかってくるわけです。「はい、北岡です。はい、サッカー協会です。」 笑
大きな声でしゃべるんですけど、周りはだいたい理解してくれてたんで。だけど、新しく来た上司がびっくりするわけですよ。この人、何してる
んだろうか?って。

坂口:会社で何してるの?と。笑

北岡:会社はサッカーに理解があったんだけど、それもね、考えなきゃいかんなって。で、そのとき、協会にお願いしたのは、NTTにお願いしてくれと。半分出向して、給料は協会が半分、NTTで半分だすというのはどうかと。ちょうどその頃っちゅうのは、所属部署がNTTから分社化して小さな職場になったもんだから、出向は無理だっていうことで。それで、辞めるという話になって。

JFAから、給料もちゃんと出ますよ、クルマも買っていいですよ、と。そういう話も聞いて、決心はしたんだけども、今度は県協会の皆さんが私のことを心配して反対でした。そんな給料が払えるのか、と。で、一年経って、SMCを修了したあとに、自分で皆さんにプレゼンテーションをしたわけです。
これぐらいの予算規模だったら、これこれこうすると、なんとか私の給料出ますよと。当時もらっていた給料から金額を大幅に落として。それだったらできるかって話で、今日おるわけですよ。だけん、会社辞めとらんかったら、もっと給料もあって、退職金もあっただろうし。笑

坂口:
では、今のお仕事内容とか活動している内容について、教えてください。

北岡:専務理事ですね。もう、事業計画から、実行から、報告から、まぁ、一応すべてをやってます。

坂口:はい。では、県のサッカー協会が何をやっているか、もう少し噛み砕いて教えていただけますか。

北岡:熊本県サッカー協会っていうのは、小学校から中学校、高校、社会人、そして女子の登録チームで600チーム、登録人数で19,000人登録されていますが、その各種別の大会をやっています。それを各種別の委員会がちゃんと実施できるように、サポートっていうかな。
大会、競技運営ってことが1番目で、協会の事務局は、予算を立てたり、グランドを確保したりってことが大きな仕事。

2番目は、技術と審判。指導者と審判の養成と、その質を上げること。この2つもそれぞれの委員会でやっているんだけど、その支援も県協会の事務局でしています。
技術については協会事務局主導でやっていて、C級とかD級とかの講習会は、事務局で企画立案をして、日程も決めて、そこに指導者も派遣するところまでやります。

審判については、審判委員会の組織がしっかりしているもんだから、委員会で年間計画を立てて実行していきます。とても計画的にやってるので、1級、2級、女子審判は、他県に比べて結構います。
事務局のすることは、資金の支援や登録とか管理。
他には、ロアッソ熊本の支援や、体育協会とか各郡市サッカー協会との連携、といったところ。

熊本県協会は、毎年毎年、その年度の目標というか、今年はこういうことを達成しましょう、来年はこういうことやりましょうって、目標設定をしています。それを具現化するのが、私の仕事ですね。
「スキルアップで九州No1」。
これは去年のですけど、今年もまた出す。No1っていうのは、これは技術だけじゃない。もちろん九州大会で優勝するっていうことも必要だけど、資金面とか、大会運営能力だとか、いろんな力の総合です。日本サッカー協会でもチャートを作ってますよね。普及とかいろいろ含めて、総合的にNo1の協会になりたいなと。

それから、アカデミー(JFAアカデミー熊本宇城)を開校しました。宇城のアカデミーを支えていくのも協会事務局の仕事です。開校から3年経って、今年、最初の卒業生が出ました。県協会がアカデミー運営の指定管理者になることも開設当初から視野に入れていましたから、3年経った今、行政と話を始めています。

人材もどんどん養成せないかん。で、今年度は、今話したロアッソ、地域、地球環境、リスペクトでいこうかと。
あと、総務委員会で、事後の検証というか、今年何ができたか、できなかったかっていう振り返りまでやってますね。

坂口:そういった重点目標は、北岡さんの意向とか考えを反映したものなのでしょうか?

北岡:もちろん私は意見を言いますけど、みんなで意見やアイデアを出します。それを文章にまとめる能力に長けている人がおるので。副会長なんですが。笑
人材は適材適所です。SMCで習ったとおり――コン・・・・

坂口:コンピテンシー、ですね。笑

北岡:そ、コンピテンシー。 笑 
自分だけでは何にもできないからね。だから、それぞれの分野で能力のある人たちを、うまく活用していくという手法で。

坂口:北岡さんのお仕事は、そういった人たちをうまく適材適所に配置して、能力を引き出しながら引っ張るってことなんですね。

北岡:ですね。やるべきことがいっぱいあるからね。自分だけでできるわけがないんで。

坂口:そうですよね。組織として、これとこれをやろうって言って、皆を引っ張って行くのがいちばん大事なところなんじゃないかなと思います。

その2 なにかを始めるか、支出を削減するか

北岡:この重点目標に書いてないのが、収益事業のこと。例えば、今年はキリンフィールドっていうサッカー教室が来ました。
それから、全国大会の主管に応募して、ビーチサッカーの全国大会やったり、U15年代の高円宮杯は2回くらい全国大会を誘致したり。
募集に手を挙げて、中学校の大会だったら、中学校の先生たちに協力をお願いして。女子は女子でお願いして。
あんたたち、する?せん?て訊いて、「やる」っちゅうたら「なら応援するよ」と。担当者たちに主体性を持ってもらうための仕掛けをするというんかな。

あとは天皇杯だとか、日本代表の試合とかっていうのも、日頃から事業委員長の満田(4期生)が全国にアンテナ張っている。いろいろ情報集めて、決めたら、もうあとはやるのみです。

坂口:今、熊本県協会全体の予算はどれくらいなんですか。

北岡:毎年だいたい1億6千から7千万円。おかしなことに、収支がマイナスになってる。しかもここのところ毎年。
ということはどういうことかっていうたら、これまで蓄えたものがあって、それを取り崩しながら、新しい事業にお金をつぎ込んでいる。ということは、もうぼちぼち、なにか収益事業を仕掛けないかんシグナルが鳴っとるもんだけん。

昨日の理事会でも、なにかを始めるか、新年度予算の支出を20%削減するとか、思い切った意見を提示しました。今あるお金をうまく使いながら、新しいことを始めていく。今年はこの予算でやりましょう、と私の提案通りで、承認してもらいました。

SMC本講座8期生の松下涼太さん。

坂口:攻めるのか、守るのか、予算作成上の大事な前提ですよね。

北岡:あとは、節減じゃないけど、いろいろ無駄なとこをなくすっちゅうか・・・・
私が金を稼いでくる割には、ぼこぼこ大きなお金が無駄に出ていくですよ。これまではどんなに頑張っても、どっかでザルだから、そんなことが起きる。これからのサッカー協会は、やっぱり、それではダメですよね。

今年、新しく松下(8期生)っちゅうのを事務局に採用したけど、彼の前職は、つくばFC でしょ。彼なんかの考え方は、なにかイベントをするときには、自分でお金を引っ張ってきて、それで大会を開いて利益を生むようにやるけど、今までうちは、事務局で予算をとるし、補助金も持ってくる、お金は用意する。そのうえ参加料まで、大盤振る舞いするわけですよ。

チェンジメーカー写真
SMC本講座8期生の松下涼太さん。

坂口:だいぶ持ち出してるんですね。

北岡:そうなんです。持ち出してるわけですよ。今までは補助金入れたなら、参加料をいただいて利益を残す、っていう習慣がなかったんですよ。もらった予算を全部使い切って終わり。

坂口:それだけではダメでしょうね。今、そういう転換期にあるということですね。

北岡:それが今ですね。はい。

その3 目的もなんもわからんかった

坂口:SMCを受講して、いかがでしたか?だいぶ、古い話ですが。

北岡:新鮮だったですね。講師の皆さんも素晴らしかったし、仲間も素晴らしかったしね。
でも最初は、行く目的もなんもわからんかったですね。経営についてもビジネスのこともわからんかったし、企画書を書きなさいっていわれてもね。
SMC申込みのときの最初の計画書を書くときは、同じ1期の薗田(1期生)に連絡して「お前ちょっと資料を送れ」と。笑

けど、それを見ながら書こうにも、自分の計画をせないかんでしょ。だから、一応参考にしたけど、大津に芝生のグラウンドができたから、そこのグラウンドや体育館とかを題材に計画作ったっていうのが、スタートやったね。

坂口:とはいえ、北岡さんは、NTTに長くお勤めされて、ビジネスの経験はあるわけじゃないですか?

北岡:仕事は、設計とか・・・・

坂口:技術屋さんだったんですね!

北岡:(うん、うん、うん)

坂口:工業高校出身ですもんね。

北岡:土木の設計、電柱の設計とか、ここ掘っていいですか、ここに電柱立てていいですか、って折衝とか。橋架け替えるから、これを移転するから、どうしましょうか、って仕事。辞めるころは、光ファイバーの売り込みとか、でしたね。

坂口:そうだったんですね。事務屋さんと技術屋さんでは、経験したお仕事内容の違いは出てきますよね。

北岡:そういうまったくわからなかったことがね、SMCで全体像が少しずつわかりました。これをしてから、これをしてって、順番に積み上げていくことで、なんとなくイメージが湧いて、それが自信になったんかな。協会を回していくのに必要な最低限の知識、マーケティングとか会計とか。まあ、だいたいなんとかなるかなと。

坂口:よかったです。今、お仕事に活かされてることってありますか?
北岡さんも熊本も、外から見てて、すごく頑張っている印象を受けるんですけど。

北岡:やっぱり仲間ね。周りにいろんないい人がおるわけです。そういう人たちが支えてくれるいうんかな。ひとりではできんっていうのは、SMCでも何度も言われたことだから。どうやって自分に足りないものを持った、その誰かを見つけるかって。うちの職員もみんなそれぞれ才能がある。
8年前にSMCの計画書で書いたことは、だいたいほぼ達成してますね。ロアッソもできあがったし。

坂口:そうですね。ロアッソもできたし、アカデミーもできたし。

北岡:だから、次はなにかっていうことですよ。問題は。

坂口:すでにたくさんのことやってますもんね。

北岡:いつも新しい事業に取り組むっていうかな、常に新しいなにかをしていないといかん性格なんでね。ひとつできたら誰かに任せて、また次新しいことをしてって、ずっとやってきたから。技術したり、審判したり、事業したり。だから、いろんなことにチャレンジするのは、苦にならない。

その4 将来につながること

坂口:今後やっていきたいことはなんですか?

北岡:協会スタッフが作業や決算に追われて、本来やらないかんところまでできないもんだけんね。もっと頭を使う仕事をしてもらいたいのにね。それが歯がゆい。
今ね、65歳ぐらいのNTTグループのサッカー部OBがいっぱいおって、そういう人たちの中には、パソコンも得意だったり、能力高めのが結構大勢おるわけですよ。だから、OBで団体を立ち上げて、そこで事務作業を効率化するような事業をやれんかなって。

例えば、協会の事業計画にはものすごい数の大会があるわけですよ。こういった大会用の経理システムを構築するとか。大会支援のためのグランド準備とか審判手配や、リーグ戦組んだりとかスタッフに日当払ったり、事務局がしていることをシステム化できないかなと。システムに、何月何日、なんとか大会って入力したら、大会要項もできあがって、ってね。日当なんかも配達人がおれば、大会ごとに封筒に入れて、配達して、領収証だけあとで送ってください、とかね。

そういったものプラス、現場の労働力として大学生を活用する。そういうルーチンの作業をサポートする会社を作りたいなっていうのはある。
購買なんかも工夫できる。例えば、協会内でボールの購入についてアンケートを取ったら、全部で年間何十万円ってなるわけですよ。そうすると1個1個買わんでも、まとめて買えば安くなる。

協会事務局がそういう作業には力を入れんでも現場が動いて、もっと将来につながることに頭を使えるようにできればと。

坂口:事務局が事務作業に追われちゃってるってことですよね。

北岡:補助金もらってくると、もう、それに追われてね・・・・
あとは、老後、近くに総合型スポーツクラブをひとつ立ち上げて・・・・

坂口:ご自宅の近くにですか?

北岡:そう、うちの家の近くで。

坂口:いいですね!

北岡:ここは、65歳で定年なんです。専務理事は。

坂口:あと4年ですね。

北岡:65歳定年って規定を今年作ったもんだから。地元で巡回指導にいったりね。もう事務仕事はしないで、現場でね。

坂口:あと、この4年の仕事としては、北岡さんの跡を継ぐ人を、育成しなきゃいけないですね。

北岡:それがいちばんの課題ですよ。専務理事で専従っていう形が、本当に必要か。必要なら待遇面ももっと考えなきゃいかん。それは、若い職員の待遇も同じ。退職金制度とか少しずつ整備し始めたけど、企画能力や夢のある職員をつなぎとめておくにはまだまだです。

坂口:熊本県協会のこれからの仕事について、これからの在り方について、短い時間でお話しいただきました。今日は、どうもありがとうございました。

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