U-17・U-20北マリアナ諸島代表監督をしております、鈴木 木乃実と申します。

海外での生活・文化・環境の違い

海外に移住するのは今回の北マリアナ諸島が初めてでしたが、たくさんの人に支えられ、おかげさまで日々充実した生活を送ることができています。少し困ったことがあり、現地の方に助けてもらったときにお礼を言うと、「あなたは私たちの家族なのだから、家族を助けるのは当たり前でしょう。」と言われることがよくあります。それほど、人と人との繋がりが濃いのが一つの特徴であり、北マリアナ諸島の良さと言えると思います。

日々のサッカー活動内容

クラブチームでのトレーニングはあまり多くないため、普段はナショナルチームとして週に3回ずつ活動をしています。大学進学のため国外へ出ている選手も多く、20歳以上の選手が少ないので、ナショナルチームの編成としてはU-20+代表、U-17の2チームに分かれています。私の役職はU-17・U-20男子代表監督なので、そのどちらのトレーニングにも携わっています。クラブチームのような活動形式なので、毎日選手の成長に触れることができるのが一つの特徴で、選手の反応や理解度を見て日々軌道修正しながら現地のコーチと協力して活動を進めています。また、トレーニングには若い選手から代表の選手まで幅広い年代の選手がいるので、お互いをリスペクトしながら活動していくことが必要になります。

大会に向けて・振り返り

2023年9月にはU-15北マリアナ諸島代表として、EAFF U15 男子選手権 2023に出場しました。その年代のほとんどの選手たちにとって初の国際大会であり、国内のサッカーのレベルとアジアのスタンダードの違いに目を開かされました。4試合すべて敗退し、特に最後の2戦である韓国戦と中国戦は相手に2桁のゴールを許す大敗を喫しましたが、「良薬口に苦し」ということわざ通り、自分たちが次の国際大会までに何をしなければいけないのかがとてもよく理解できた大会でした。2024年はAFC U20アジアカップ2025予選とAFC U17アジアカップ2025予選があり、そのためのチーム活動がスタートしています。オンザピッチだけでなくオフザピッチでの課題も多くありますが、これまで選手、指導者・スタッフが築いてきてくださったものを形として証明できるよう、一歩ずつ着実に前進していきたいと思います。

北マリアナ諸島におけるサッカーの事情

北マリアナサッカー協会ができて20年目、AFCに正規加盟が認められて5年目と、アジアの他の国々に比べるとサッカーそのものが新しいスポーツですが、たくさんの方々のご尽力によって、急速にサッカー文化が発展していると実感しています。毎週土日は子どもから大人までがグラウンドに集まり、朝から晩までそれぞれのカテゴリーでサッカーを楽しんでいます。

その一方で、観光業が主流の国であるため、コロナウイルスの流行によって経済に大きな打撃を受けており、島から離れていく人が増え、島の人口は年々減少していることも事実です。そのような状況下においてどのようにサッカー人口をここからさらに増やしていくことができるかが、現在直面している大きな課題の一つとして挙げられます。また、代表での活動内容はもちろんですが、リーグ戦やフェスティバルの改善、継続的な指導者養成など、ソフト面においての質の追求も、急速にサッカー文化が発展してきたからこそ出てきている課題であると感じています。

昨年より、北マリアナ諸島サッカー協会技術委員長兼代表監督である三田智輝さんの主導のもと、国内で初めてAFC B級コーチライセンス講習会が開催され、北マリアナ諸島からは、国外でA・B級ライセンスを取得した男女3名に加えて、新たに5名のB級ライセンス保持者が誕生しました。彼らは前述した3名とともに北マリアナ諸島のサッカーの未来を担っていく存在であり、そんな現地の指導者たちの成長に寄り添っていくことも、私自身がこの国のためにできる役割であるということを改めて実感しました。

今後もこの国のサッカーファミリーとともに、「サッカーで北マリアナ諸島のみんなをハッピーにする」というJerry Tan北マリアナ諸島サッカー協会会長の理念のもと、サッカー文化のさらなる発展の一助を担うことができるよう努力してまいります。