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[女子チームのつくりかた]ジュビロ磐田レディースでコーチを務める鈴木恵美子さんにお話を聞きました。

2009年12月09日

[女子チームのつくりかた]ジュビロ磐田レディースでコーチを務める鈴木恵美子さんにお話を聞きました。

チームを立ち上げようと思ったきっかけは?

ジュビロ磐田レディース自体は1986年にヤマハ発動機のサッカースクールとして創設されました。当初は中高生をターゲットに活動し、現在はU-12~15年代の選手が登録しています。2008年に静岡産業大学、磐田東高等学校、そしてジュビロ磐田レディースの3チームでクラブ申請をし、それぞれの年代のチームが連携を図って活動するようになりました。ここに至った背景には、磐田市で全日本高等学校女子サッカー選手権大会が開催されており、女子サッカーを盛り上げようという機運がありました。磐田東高校は地元の高校としてその大会を目標に活動しています。もともと私たちのチームから磐田東高校へ進学する選手も多く、非常につながりも深いものがあったわけです。そして磐田東高校と静岡産業大学女子サッカー部も監督同士がよく知っていて、それぞれつながりがありました。そして静岡産業大学の三浦哲治監督からクラブ化のお話をいただき、現在に至ります。

立ち上げに至るまでの流れを教えてください。

2007年の秋頃にクラブ化して活動をすることが具体的になってきました。もとはそれぞれに活動していたチーム同士ですので、特に何かを準備する必要はなく、2008年2月には、改めて現在の形で活動をスタートさせることができました。

これまでに生じた最大の壁はどんなことでしたか?

あまり壁というものはなかったように思います。ただ、別々に活動している3つのチームがクラブ化するというケースが少なかったですので、このシステムを説明するのが少し大変といえば大変だったかもしれません。選手たちにはピラミッドの絵を書いて、トップにくるのが静岡産業大学、真ん中が磐田東高校、底辺の部分がジュビロ磐田レディースとなり、がんばれば上のカテゴリーでもサッカーが続けられる環境になったんだということを伝えました。

独自のアイデアというものはありますか?

3チームはそれぞれでチーム登録をしていますので、そのチームで試合や大会に出場します。それに加えて当チームから磐田東高校や、状況によっては静岡産業大学の試合に出場することができます。これはクラブ化したからこその最大のメリットと言えるのではないでしょうか。これによって、選手の能力に合った環境でプレーすることができるようになり、経験の幅も広がりました。現在はU-12、U-15年代の選手が在籍していますが、長い目で育成できるようになりました。トレーニングプランを構築する際にも、同年代との比較だけではなくなるので、目的を持った効果的なものを選ぶようにしています。また、静岡産業大学は来季からチャレンジリーグへの参入が決まっていますし、磐田東高校は全国大会へ出場するなど活躍されています。自分たちの目標になるチームや選手がすぐそばにあるのは、選手たちにとってこれ以上ない刺激となっていると思います。

チームが始動してから生じた課題とそれに対する取り組みを教えてください。

まだ活動を始めたばかりですので、「クラブ」という活動スタイルをご存知でない方もたくさんいらっしゃいます。「なぜ二重登録とならないのか」との質問をいただくこともあります。これからは、この3チームの取り組みや活動を多くの方に知ってもらい、理解をいただく努力をしなければいけないと思っています。

これからチームが目指すビジョンとは?

現在、静岡産業大学、磐田東高校で活躍されている選手の中にも、U-12、U-15年代を当チームで過ごした選手が大勢います。そういった選手も含めて今のU-12、U-15年代選手の憧れや目標になってほしいと思いますし、U-12、U-15年代の選手の成長とともに今度は自分たちがその立場になるというようにつながっていってほしいと思います。まだ始まったばかりですし、今後もできることからコツコツと続けていきたいと考えています。

静岡産業大学の三浦哲冶監督にも話を聞きました!

クラブ化(クラブ申請)を考えられたきっかけは何だったのでしょうか?
もともとは磐田の女子サッカーを活性化しようと市の方でも取り組んでいたんです。ただサッカー部を作っても、指導者や場所の問題もあり、ゼロから作るというのはあまり現実的ではありません。ただ大会を招致してきても、磐田自体の普及につながるものにしなければ意味がない。だったらもともと活動しているチーム同士が協力をして、互いに足りないところは補いながらクラブ化したら、みんなやってくれるのではないかと思ったんです。

クラブ化にあたって苦労されたところはありますか?
それがほとんどなかったんですよ(笑)。至ってスムーズでした。やはりそれぞれのチームがかねてから親交もあり、互いによく知っている間柄でしたし、ともにメリットがしっかりあったので、話が止まるということはありませんでした。

クラブ化をして、実際の活動で変化はありましたか?
大学でも1、2年生だけでは人数はなかなか集まりません。競技サッカーをしたい人たちは、もっとサッカーで有名な大学へ進学していきます。でもなでしこリーグという目標を持ち、実際にチャレンジリーグへの参入も決まって、目指すところがしっかりと見えたことで、有望な選手も少しずつではありますが、入ってきてくれる流れになってきたことは大きいですね。選手たちもクラブ化のことを理解して来てくれている。もっとマッチしていけば、より目標に近づけるようなチームになると思っています。

磐田東高校の北野宗克監督にも話を聞きました!

クラブ化にともなって、選手たちに変化はありましたか?
私たちはチャレンジリーグに参入決定するまさにその試合にも何人かの選手を送っていたのですが、実際に“なでしこリーグ”という舞台へ向かって戦えるという向上心、自信が生まれました。大きな刺激となったようです。また、高校の県リーグで戦うという試合などには磐田レディースから選手を送ってもらっています。U-15年代と高校生での一番の違いはやはり体力面です。それをカバーするためにはどうしたらいいのか。基本技術の習得を徹底してほしいなど、フィードバックは頻繁にしています。もちろん個々にもアドバイスはしますし、次に来たときにはまた違ったプレーを見せてくれるので彼女たちの成長に寄せる期待は大きいですね。

今後はどのように発展させていきたいですか?
磐田東高校のコーチは静岡産業大学のコーチでもあるんです。OGもたくさんお世話になっているし、強いパイプがある。常に選手の状況を理解できる環境にあるんです。ですから高校・大学と7年通してサッカーができる環境がここにはある。これまでは高校でサッカーをやめてしまう選手も多かったんです。それが続けるようになってきた。これは今後も流れを作っていきたいところです。あとは底辺の拡大。女子サッカーはここが重要です。サッカーは楽しいんだということを広めて、底辺からの発展を目指したいですね。磐田という地域は県の協力があります。女子サッカーを発展させる上で地域との協力は欠かせません。地域に密着した活動ができれば、他の地域でもこういった活動は決して不可能ではないと思います。

チームトレーニングレポート

 

ジュビロ磐田レディースのトレーニングは週に火曜、木曜、土曜、日曜。週末はトレーニングか試合になります。小学生は17時30分から、中学生は19時からそれぞれ1時間30分のトレーニングを行い、現在所属しているのは小学生(3年生~6年生)が22名、中学生が13名。

この日の中学生のトレーニングには受験生を除く選手たちが参加していました。陽が落ちて急激に寒くなった19時前になると、次々と選手たちが集まってきます。自転車に乗ってきたりや家の人に車で送ってきてもらったりとその手段はさまざま。サッカーシューズを履き替えると、全員でのアップを兼ねたパスまわしが始まりました。ピッチは人口芝半面を利用。隣にはフルピッチがあり、そこではジュビロ磐田ジュニアユースの選手たちがトレーニングを行っています。ジュビロ磐田のトップチームを夢見ながらトレーニングに励む選手たちのすぐ隣のピッチでジュビロ磐田レディースの選手たちも、懸命にボールを追いかけていました。スペースを大きく使いながら4箇所へ分かれてのパス。しっかりとコントロールし、そして相手を見るようにと波多野雅士コーチから指示が飛びます。その後は監督も交じって、1人フリーマンを作っての3対3。最後はキーパーを入れてのミニゲームという1時間30分でした。

トレーニング後、磐田東高校で試合出場を経験した中学2年生の鈴木沙彩さんに話を聞きました。「ひとつ上のカテゴリーではみんなスピードも上がるので大変ですが、いい経験になったと思います。磐田東高校とは一緒にトレーニングをしたりもするし、先輩もたくさんいるので親近感はある。でも、挨拶とか生活面でもしっかりしないといけないので、引き締まる感じがしますね。生活面でも、ピッチでもきちんと判断できるような選手になりたいと思います」と磐田東高校での経験からいろんなことを学んだという鈴木さん。ジュビロ磐田レディースのサッカーというものは、昔と今も変わりはありません。磐田東高校、静岡産業大学もそれは同じです。そんな3つのサッカーに触れることができるのも選手にとっては刺激となるようです。合同トレーニングという機会を設けて、互いに交流できることも、指導者や選手にとって意義深いものとなっているようです。「高校のリーグ戦などでは磐田東高校から何人送ってもらないだろうかという打診をもらいます。そこに合わせて選手を送るのですが、参加して戻ってくると選手たちもどこか締まって帰ってくるので、どんどんいろんな経験をしてほしいですね。高いレベルでプレーをすると、今の自分のレベルもはっきりと知ることができます。そこを基準にして日々トレーニングをしていこうと選手たちには伝えています」と語るのは波多野コーチ。
それぞれ3つのチームが足りない部分、弱い部分を補い、協力し合いながら次のステップをつなげる。このシステムを新しく1チームが作り上げていくというのは非常に難しいと思われます。しかし、こうした世代別のチーム同士の協力関係があれば、ほかの地域でも構築することは不可能ではありません。それぞれが意見交換、フィードバックといったコミュニケーションを第一に、そして地域と協力していくことで実現した新しいチームの形がそこにはありました。

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