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白昼堂々のオフサイド? ~いつも心にリスペクト Vol.157~

2026年06月23日

白昼堂々のオフサイド? ~いつも心にリスペクト Vol.157~

味方のシュートがそれて飛んできたところをMFマシュー・バルディシモがシュート。それをGKが鮮やかにセーブ。しかしボールは「オフサイド・ポジション」のFWアレハンドロ・ディアスの足元に飛び、とっさに反応したディアスが左足でゴールにたたき込む――。明らかにオフサイドのケースです。GKが右手を挙げ、守備側の選手たちがいっせいに「オフサイド!」と叫びます。

しかし副審は旗を挙げません。そしてVARの確認の結果、得点が認められます。

これまで誰も注目していなかったカナダのリーグが、いま世界の耳目を集めています。4月に開幕した「カナディアン・プレミアリーグ(CPL)」。そこで新しいオフサイドルール、一般に「デイライト・オフサイド」と呼ばれるものが試験採用されているからです。

現行のオフサイドルールでは、攻撃側の体(手を除く)の一部でも守備側の2人目の選手からゴールライン側に出ていたら「オフサイド・ポジション」となり、その選手がボールをプレーする、あるいはプレーに関与すれば、オフサイドの反則となります。

しかし「デイライト・オフサイド」では、攻撃側が守備側の後ろから2番目の選手の体より「完全に」ゴールライン側に出ていなければ反則にはなりません。元アーセナル監督で現在は国際サッカー連盟(FIFA)の「グローバル開発部門」のチーフを務めるアーセン・ベンゲルさんが考案し、提案したことにより、「ベンゲル・ルール」とも呼ばれています。

サッカーのルールを決める国際サッカー評議会(IFAB)の許可を得て、今季、この新ルールがCPLで「試験採用」されることになりました。その適用第一号が、4月18日の第3節、ハリファックス・ワンダラーズ×パシフィックFC、0-0で迎えた前半20分、ビジターのパシフィックのディアスのゴールだったのです。

カナダの強豪クラブであるバンクーバー・ホワイトキャップス、トロントFC、そしてCFモントリオールの3つは、現在、アメリカのプロリーグ「MLS」に加盟しています。この3クラブはカップ戦の「カナダ選手権」には参加し、過去18回の同大会中、14回を制覇しています。しかし他のクラブには、長く全国リーグはありませんでした。そこでMLS参加クラブ以外のカナダの全国リーグとして2019年にスタートしたのがCPLでした。「世界で最も若いプロリーグ」です。

今季は8クラブで行われていますが、7クラブで行われた2025シーズンの1試合平均入場者数は3988人。日本でいえばJ3(3766人)の規模で、全ての面で「これから」と言っていいでしょう。そのリーグが、「サッカーを根本的に変える革命」とまで言われる「デイライト・オフサイド」に挑戦しているのです。

パシフィックスのフィリピン代表MFバルディシモがシュートした瞬間、最終的に得点したFWディアス(メキシコ)の体は、大半が守備側の最終ラインより前にありました。そこにGKがセーブしたボールが飛んできました。「意図的なセーブ」は相手のプレーとはされませんから、現行のルールならオフサイドです。ところが、ハリファックスの「最終ライン」MFロレンゾ・カリガリ(フランス)の体が、わずかにディアスの体にかかっていたのです。VARがこの事実を確認し、パシフィックの先制点が認められました。

「デイライト」とは本来「日光」の意味で、そこから「あからさまな状態」の意味が派生しています。守備側と攻撃側の間に「明確な隙間」がある場合にだけオフサイドとなるというのです。

オフサイドルールは、1925年に「3人制」から「2人制」に変わり、それがサッカーの戦術に革命的な影響を与えました。「デイライト・オフサイド」は、それに近いあるいはそれを超えるインパクトを持つと想像されます。「2027年に正式ルール化」のうわさもありますが、この新ルールになったらサッカーがどう変わるか、みなさんも想像してみてください。

寄稿:大住良之(サッカージャーナリスト)

※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会機関誌『JFAnews』2026年5月号より転載しています。

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